
2012.7.15 2:28 / 18-105mm / 18mm 240s (30s x 8) F5.6 ISO800
※今回は天体写真のフラット補正のやり方について説明します。Web掲載用に画像は縮小しています。
「フラット補正」とは何か…
フラット補正とは、周辺光量の低下などによって暗くなった周辺を明るくし、画面全体の背景の明るさを同じようにする技術である。
また、天体写真などでは、都市の光や月の光により背景の明るさや色が付いてしまう場合があり、これの補正にも使われる。
【例】
Before![]() | After![]() |
左の写真はNikonの18-105mm、F5.6、ISO800で30秒露光したものを8枚平均合成し、コントラスト強調したものである。周辺減光による四隅の暗さが目立っている。
右の写真は左の写真の背景を取り出し、フラット補正したものである。周辺減光の影響がほぼ皆無になり、四隅も明るく写っている。
1.まず写真を撮る。

長時間露出を必要とするため、追尾撮影が望ましい。
2.合成してノイズを除去する
3.色調を補正する

一般的には「コンポジット合成」という方法を用いる。ここではYIMGを使用。
都市の光の影響を受けるような場所では、バックグラウンドが明るくなってしまう。そのため、コントラストを上げる必要がある。
4.背景データを生成する
背景データを作成するには、YIMGというソフトを使用する。背景検出領域は32~64くらいにするのが無難。下のような画像が得られる。

この写真では天の川が写り込んでいるため、その部分が明るくなってしまう。
5.背景データを修正する
このデータを用いて背景補正すると天の川が消滅して寂しい写真になってしまう。そのため、GIMPとJTrimというソフトを用いて背景データから天の川を消去する。

GIMPでは、ブラシ機能の「比較明」「比較暗」機能を駆使して背景をフラットに近づける。

GIMPで加工しただけだと不自然な画像となってしまうので、JTrimの「拡散」機能を使って画像を滑らかにする。
最初は全体的に100ぐらいで適用し、滑らかではない部分を選択して数回拡散処理を行う。
粒子状のノイズが残るため、最後は「ソフトレンズ」という処理で全体を滑らかにする。
【完成例】

天の川の部分が平らになり、背景データとして使えるようになった。
6.背景データを適用する
再びYIMGを起動し、バックグラウンド補正(画像データ参照)を使用する。

これを行うと、下のように周辺減光のない画像が得られる。

7.コントラストや明るさを調整する
この得られたデータのコントラストを上げ、上のような眠い画像を美しい(笑)な写真に仕上げる。

あまりやり過ぎるとノイズが増えてしまうので注意。
ページトップの画像は完成したものを掲載した。
【備考】
・合成まではなるべくTIFFで保存して行うのが望ましい。
(階調の劣化が少なくなります)
・なるべく多くの枚数の画像を用いるのが望ましい。
(ノイズが減って綺麗な画像が出来上がります)
8.この方法のまとめ
【この方法の長所】
・周辺光量が不足するレンズでも正確な補正が可能。
・天の川や大規模な星雲があっても補正できる。
・都市部などの光の影響が大きい場所で、色が被っている場合に有効。
【この方法の短所】
・ノイズが増えやすい。
・ある程度の技術を必要とする。
(特に背景データはなるべく平坦にする必要がある)
・面倒くさい。
…はっきり言って欠点はこれに尽きます。これだけの手間をかけて綺麗な画像を作りたいんだ!というのならいい方法だと思います。
この記事のタイトルは「楽しいフラット補正」とありますが、この方法の特徴を考えたら「激しいフラット補正」が正しいかと思います(笑)。
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