exposure_value
・色反転バージョン

  写真では、わけの分からない単語が非常に多い。特によく聞くものとして、「EV」や「」がある。段といっても、柔道六段とか空手七段とかそういうのではなく、「2の○乗」という意味である。「EV」も「段」と同じ意味で、1EV増えると数値が2倍になる。

  EVには2つの意味があり、前述の「段」を意味する言葉の他に、風景の明るさを表す意味でも使われる。それを「EV値」と呼ぶ。例えば晴天時にはEV値は大きくなり、雨天時や夜には小さくなる。
主な状況とEV値の関係を上の図に示した。

  では、明るさを表す「EV値」は写真とどういう関係があるのだろうか。一般的に、「シャッタースピード」「絞り値(口径比)」「ISO感度」の3つがEVと関係あるとされている。

EV-kuro
・白黒反転バージョン
※一般的にカメラで使われている値を示しています。例えば、2の7乗=128ですが、カメラでは一般的に丸めて125と表示されています。

  ここではわかりやすいように、外からの光を水、絞りやシャッターなどの制御装置を蛇口、カメラのセンサーをコップに例える。

  一番左はシャッター速度とTv(シャッター速度を段数で表したもの)の関係表である。蛇口で例えると、蛇口を開いて閉じるまでの間の時間となる。

  左から二番目は、絞り値とAv(絞り値を段数で表したもの)の関係表である。蛇口で例えると、蛇口の口の大きさ(大きいほど水を多く放出する)である。

  左から三番目は、ISO感度とSv(フィルムやセンサーの画素の光に対する感度を段数で表したもの)の関係表である。蛇口の下にコップを置いてコップに水を溜める時、水の溜まりやすさを表している。

  一番右は、減光(ND)フィルターや偏光フィルターなどを用いた時の、露出倍数(フィルターをつけた場合、無い場合に比べて何倍暗くなるか)とEVの関係表である。一般に偏光フィルターは露出倍数2.5前後、色彩効果フィルターは1.5~4倍あるといわれている。例えば、長時間露光でND400フィルターを使う場合、上表より8.64EV(約8 2/3 EV)暗くなることが分かる。

  ここで気づく人がいるかもしれないが、他はすべて1EVにつき2倍増加しているのに対し、絞り値のみ1EVにつき約1.4倍増加している。これは、光を取り入れる量が関係している。まず、絞り値(F値)の定義は「絞り値(F値)=焦点距離÷口径の大きさ」で表される。

  この考え方はあまり馴染みがないが、大砲望遠鏡などでは口径と焦点距離の比がよく使われている。光が入る量は面積に比例するため、「1.4の2乗=約2.0=1段」ということになるのである。


  では、EVはどうやって求めるのか。式で簡潔に表すと次のようになる。

  EV = Tv + Av - Sv

  言葉を使って表すと、

  風景の明るさ = シャッター速度 + 絞りの度合い - センサーの感度


  となる。

  風景の明るさが一定の場合、シャッター速度が速い(露光時間が短い→Tvが増加)ほど、センサーに蓄積する光の量が少なくなり暗い写真ができる。また、絞りを絞る(F値が大きい→Avが増加)ほど、レンズを通過する光の量は減少し暗い写真ができる。

  一方、ISO感度を上げる(センサーの感度が高い→Svが増加)ほど、センサーが感知する光の量が多くなり、結果的に明るい写真ができる。


  しかし、これだけで話は済まない。多くのカメラには写真全体の明るさを変える「露出補正」というものがある。

  これは、コントラストが極端に高い風景において色を強調したい部分が真っ白や真っ黒になってしまう時や、人物写真などで意図的に明るさを変えて雰囲気を出すときに使われる。

  定義としては、写真を明るくする方向がプラス暗くする方向がマイナスである。

  露出補正量をXと定義すると、次の式で表される。

  EV = Tv + Av - Sv - X


  言葉を使って表すと、

  風景の明るさ = シャッター速度 + 絞りの度合い - センサーの感度 - 露出補正量

  となる。

  露出補正量をプラスに動かすと、写真全体が明るくなるが、そのために「シャッター速度を遅くする」「絞りを開く」「センサー感度を上げる」などの必要が出てくる。

  蛇口で例えるならば、「露出補正+1EV」ということは、即ち「コップを2個置く」(→写真を2倍明るくする)ということに等しい。


  これまでの内容をまとめると次のようになる。

1.「1段」=「1EV」=2倍

2.「EV」は風景の明るさを表す値としても使われる。それはEV=15のように値で表され、「EV値」と呼ばれる

3.絞り値(F値)は、2倍になると4倍暗くなる

4.適切な明るさの写真は、風景の明るさ・シャッター速度・絞り・センサー感度のバランスがとれている時に実現する



※この記事は次回に続く予定です。
※今回は写真なくてごめんなさい。
※次回こそ本気を出すつもりです(笑)。