P1091842
2010年1月9日撮影:Olympus E-P1

  都市の良し悪しを考えるときに、「景観」というものは非常に重要です。国レベルの都市計画から、我々の日常生活での風景まで、景観というものは関わっています。

  一方で、我が国日本の景観はあまり良くないといわれることがあります。その主な原因として、「統一感のない建物」「調和しない配色」「広告の多さ」などがあると思われます。

  この景観問題に対し、一時期「美しい景観を創る会」というものが設立され、悪い景観70個と良い景観30個がリストアップされました。勿論、人それぞれ価値観は違いますし、悪い景観の選び方について反論も多いです。個人的には国レベルで景観問題を提起する動きが出てきたのは良いことだと思いました。

・参考1:”悪い景観100景で考える”
・参考2:景観100景
・参考3:悪い景観100景の適当さ


  歴史的建造物などを見ると、「建物自体は趣があるが、周囲の景観が残念すぎる」という例が多くみられます。有名なものでは、札幌の時計台がそれに該当すると思います。

  例えば、一番上に掲載した写真ですが、これは2010年に小樽で撮影したものです。「白い恋人」の看板がありますが、この建物全体を見ると、歴史的な雰囲気を感じるようなものとなっています。

  しかし、左側を見るといかにも平成的な新しい建物があります。ミスマッチもいいところでしょう。昼間になると、この「ミスマッチ」景観はさらに強調されます。

P1091819

  例えば、京都のような景観を重要視する町ではこのようなミスマッチ景観は嫌われ、左にいる洋服の青山さんは店舗の改装を余儀なくされると思います。小樽市も景観を比較的重要視する年ですから、このようなミスマッチ景観は見逃さないと思います。

  しかし、何故かこの風景はいつまでたっても変わりません(2010年時点)。おそらく、洋服の青山さん・その顧客への負担が大きい、小樽は財政が厳しいのでそれどころじゃない、観光客が多い現状に満足している、などの理由が挙げられると思います。

  また、ミスマッチを善しとするいわゆる「ギャップ萌え」の存在も挙げられます。「ミスマッチではなく、新旧の小樽が融合した素晴らしい風景だ」と主張する人もいるかもしれません。一般的には悪い景観の代表例として挙げられていますが、人の価値観は多様なので、難しい問題なのでしょう。

P1091813

P1091812

  上の2枚は、同じく小樽の海岸方向を撮影したものです。1枚目でも2枚目でも新旧のものが混在していますが、この場合は(少なくとも管理人は)変な違和感を感じません。
(変・違和感と重複しているのは余程変だと思ったため)

  世界には景観の「新旧融合」をやって成功しているところもある一方で、水と油を混ぜるような不自然な新旧の同居もありますから、もし都市計画をやるような職に就いたらよく考える必要があると思います。そうでなくとも、景観は人々の精神に大きな影響を与えますから、自分には関係ないと思っても気にしたほうがいいと思います。

DSC_0724

DSC_0726
2013年4月9日撮影:D7000

  最後に、札幌時計台の例です。札幌時計台は札幌農学校(現在の北海道大学)時代からの長い歴史がある建物ですが、「がっかり風景」に選ばれるなど、中々不憫な歴史的建造物です。

  まだ葉が茂っていない4月上旬だったので、「がっかり度」が尚のこと強調されています。この建物も、土地を十分に確保して道庁赤レンガのように公園整備などをすればこのような事態にはならなかったと思いますが、政治的な経緯などで難しかったのでしょう。

  右にあるのは札幌市役所ですが、札幌市役所は必要なものですし、周囲にある他のビルも簡単に移転できるものではありません。

  日本の景観の悪いところは、バブル期の無造作な高層ビル開発や、効率性ばかりを重要視した構造があるといわれています。しかし、それはそれで歴史的であり、完全否定することは難しいと思います。

  人の価値観は人それぞれ違い、ごちゃごちゃした景観が好きという人もいれば、きれいに整理整頓された景観がいいという人もいます。今回の記事では「良い景観」「悪い景観」とはっきり断定してしまった面がありますが、必ずしも良い悪いと言い切れるものではありません。

  「景観問題」は人々の価値観の違いもあり非常に難しい問題ですが、もし、ある景観を目指すことでその地域や住民・地域外の人たちに利益をもたらすのであれば、十分に取り組む価値はあると思います。