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2015年12月23日 / NIKON D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ED
50mm, F1.8, 1/100s, ISO3600 (50%にリサイズ)


  さて、2015年(平成27年)はどんな年だったでしょうか。佐野氏のパクリ事件、五郎丸ポーズ、中国人観光客の増加、等色々あったと思います。写真に関することでも、ドローンの普及やPENTAXフルサイズ発表など、色々なニュースが有りました。

  で、話が突然変わるのですが、写真が上達すると一般的に言われている「単焦点レンズ」。その意外な落とし穴について考えてみようと思います。



1.「ボケ」に依存しすぎる

  単焦点レンズは、設計上画角を変化させる必要が無いため、特定の焦点距離に特化した設計が可能です。そのため、コンパクトで明るい、といったレンズも作ることができます。

  そのため、特に標準域(35~85mm)のレンズは低価格でボケやすくて大きさも小さめのレンズが多いです。そして、こういったレンズを持つことで初めて「ボケ」を体験するという人も少なく無いです。

  しかし、それが最大の欠点でもあります。確かに「ボケ」という表現は写真の大きな要素であり、特に人物を強調するポートレイト写真などでは無くては欠かせないものです。である以上、「ボケ」という表現技法を使いすぎてしまうのも現実です。

  カメラを初めてそれほど長くなく、単焦点レンズで構図やボケの勉強している皆さん、単焦点レンズを大きく絞って(F5.6以上)使ったことはあるでしょうか?

  「単焦点レンズを絞る」という行為は、人によっては「単焦点レンズのメリットを潰す」とか「明るいレンズに対する冒涜だ」とか思っている方もいるかもしれませんが、それも一つの使い方なのです。

  特に、カメラに少し慣れてくると「ボケ依存症」なる状態になります。風景撮影をあまりせず、人物系(コスプレ以外)の撮影が中心の人は特にそうなる傾向があると思います。
ボケない写真は美しくない」「ボケないレンズは糞だ」といった考え方です。

  しかし、ボケない写真だっていい写真はあります。それは、ボケ以外にも画角・構図・光の加減・ホワイトバランスなどを工夫しているからです。もちろん、被写体以外をぼかした写真にも良い物はたくさんありますが、ぼかさなくてもいい写真はあるのです。

  単焦点レンズのボケは、初心者でもプロが撮ったかのように見せる効果はありますが、ボケばかりに依存せず、様々な撮影技法を取り入れていくことが大事だと思います。



2.単焦点は便利すぎる!

  単焦点レンズをすすめる理由として「画角が固定で不便だから、自分で動くことで構図や距離感の勉強になる」という意見が、一般的に使われていると思います。たしかにそれも一理あります。

  では、ズームレンズは便利でしょうか。

  ズームレンズは、撮影者と被写体の距離の他に、画角変動の自由があります。つまり、撮影者と被写体の距離が一定でも、画角さえ変更すれば構図を変えられます。

  しかし、「ズームレンズは動いてはいけない」というルールは一切ありません。ズームレンズのズームとは、あくまで「画角が可変である」という意味に過ぎず、14mmで空を撮ろうが、300mmで被写体に最接近しようが自由です。

  このように、ズームレンズは単焦点レンズに比べ自由度が高いといえます。自由度が高いということは、それだけ構図のバリエーションが増えるということであり、そう考えるとズームレンズは不便である、と結論付けることも可能です。

  「単焦点レンズは不便で、高倍率ズームは超便利」というのは、あくまでズームレンズを固定の位置から撮影するという前提のもとで成り立つ理論です。ある程度慣れてきて構図や撮影技法の知識を知ってくると、ズームレンズは逆に煩雑なものとなります。

  また、1で述べたように単焦点レンズは設計上明るいものが多いですが、逆にズームレンズは倍率が増えるほど暗いものが多いです。暗い(F値が大きい)ということは、一般的にぼかすためには不利となります。そう考えると、ボケを利用した技法ではズームレンズは不便といえます。

  しかし、逆に考えれば、厳しいF値の制約の中でどうやってぼかすか?ということを考える機会を与えるので、ボケの勉強をするという意味でも、ズームレンズはメリットがあると思われます。

  ここまでズームレンズの不便さを強調してきましたが、よく考えてみると、「ズームレンズは複数本のレンズを交換しなくてもいいから便利」というのはあるのかもしれませんね…

【ズームレンズのここが便利!】
・立入禁止の場所など近寄れない場所では、動かずに寄った撮影ができる
・広角~望遠まで被写体の画角が変化する場合、レンズ交換が不要である


【ズームレンズのここが不便!】
・画角と撮影距離という2つの要素を調整できるため、構図を決めるのが難しい場合がある
・一般にF値が大きく、ボケを活かした撮影では単焦点よりも工夫が必要



3.レンズ交換が多いことによるデメリット

  ズームレンズのメリットとして、レンズ交換が不要であるということを挙げたと思います。多くの人は単焦点だけでなくズームレンズも持っていると思うので問題ないと思いますが、広角~望遠まで使うようなイベント等で色々な画角の単焦点レンズを持っていると、レンズ交換の回数が増えると思います。
(一方、カメラの台数を増やせばいいという対策方法もあります。その分重くなってしまいますが…)

  レンズを交換する回数が増えれば増えるほど、ボディ内への水分やゴミの侵入、マウントの劣化などを招くこととなります。カメラやレンズを長く使いたい、ということを考える場合には、気をつける必要があると思います。



総括

  最近、ズームレンズを捨てろ!とか、単焦点レンズのメリットを強調する本が増えていますが、単焦点がいいとか、ズームがいいとかそういう議論ではなく、両者を比較して違いを見つけるほうが上達に繋がるのでは?と思っています。そう考えると、焦点距離をカバーするように中途半端なレンズを買うよりは、性質の異なるレンズを買ったほうがいいのかもしれませんね。

【レンズの揃え方の例】

・高倍率ズーム & 単焦点
・高倍率ズーム & 低倍率ズーム
・マクロレンズ & 普通のレンズ
・広角 & 望遠
・標準 & 極端な画角のレンズ
・最新レンズ & オールドレンズ
・爆速AFレンズ & MF専用レンズ
・撒き餌レンズ & 高級レンズ


  そういえば、iPhoneなどのカメラはほとんど単焦点レンズなので、多くの人が知らずのうちに単焦点レンズを使っているのでしょうね…