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突然ですが、あなたのPCのCPUは何でしょうか?
一般人だったら「Core」とか「Ryzen」とかだと思いますが、最近あるCPUが安くなって特に海外で注目されています。
それが旧世代のXeonです。


■安いXeon、高いi7
とにかく高性能なCPUを買いたいのであれば、Ryzen 9とかCore i9とか買えばいいのですが、最新世代のこれらのCPUは全般的に高価で、手が届きにくいです。
かと言ってCore i5辺りまで下げると6コアしか無くて物足りない…

そこで出てくるのが、旧世代のXeonです。
Intel Xeonは元々サーバーやワークステーションで使用される業務用のCPUのブランドで、最新世代のものはかなり高価な一方、旧世代になるとものすごく安く売っているものもあります。
中古市場価格では、Sandy Bridge~Ivy Bridge世代の8コアモデルがなんと1万切り!?
という衝撃的な価格になっています。

一方、中古CPUを検討するにあたって、普通はCore i7とか検討すると思います。
しかし、Core i7、特にメインストリーム向けでK付きのi7はコスパ悪すぎです。
2600K、3770K、4770K … まだこの辺までは割と安くていいですが、
4790Kは現役で通用し人気があるせいで1万円台後半と高く、
5775Cはその希少価値から2万円以上と高価で、
6700Kや7700Kは現行のCore i3以下の性能なのに2万円以上と高いです。
特に7700Kは8700Kの登場によって短命に終わり、しかも中古ではやたらと高値で取引されている「常に時期が悪いCPU」となってしまいました。

(※7700Kが高価なのは、ゲーミング性能が現在でも通用する上に、4コアで消費電力が少なめというのが理由として挙げられる。)

安いXeon、高いi7、中古CPUを探す際はこの点に注意して下さい。


■なぜ旧世代のXeonは安いのか?
さて、元々はかなり高価な価格設定だったXeon、ではなぜ中古になるとXeonはi7よりも安いのでしょうか?

1. シングルスレッド性能の低さ、OC非対応
Xeonはコア数が多いモデルが多いですが、その一方でシングルスレッド性能は全般的に低めです。Xeonはゲーミング性能よりも安定性や計算分野での性能を重視しています。
また、Core i7などと違いオーバークロックを前提としていません。
(Xeonと比較してi7のK付きが高い理由は、オーバークロック対応が原因だったりする)
なので、ゲーミングPCを組もうと思う場合に、Xeonは向かない可能性があります。
ただし、ゲーミング性能がCoreより低めといっても6~7割くらいのFPSは出るようなので、ゲームによっては問題ない場合もあります。

2. サーバー更新の影響でXeonが余る
一般的に企業のサーバーは5~10年間隔で更新されますが、その際に旧サーバーのCPUが余ることがあります。
実際、特に中国ではその影響で旧世代のXeonが大量出荷されており、12コアや16コアのXeonが価格崩壊を起こしていることがあります。
中古品だと寿命が気になるところですが、そもそもCPUは故障するリスクが低く、特にXeonは適切な冷却環境で使用されていることが多いため、壊れるリスクは低いと思って問題ないです。

3. Ryzen登場の影響
Xeonの価格崩壊が起こった要因として、特にAMD Ryzenの登場による多コアCPUの増加による、8~16コアCPUの価格下落圧力が挙げられます。
2015年頃であれば、6コア~8コアのCPUは高価でしたが、
(6コア:Core i7-5820K…約4万円)
(8コア:Core i7-5960X…約11万円)
2017年のRyzen登場以降、6コアが2万円台、8コアが4万円台まで下落し、旧世代Xeonの中古価格もその影響を受けて一気に値下がりしました。

こういった背景があり、今や旧世代Xeonは、マルチスレッド性能が高性能にも関わらず、激安という美味しいCPUとなりつつあります。


■おすすめ・おすすめしないXeon

【おすすめ】
・Sandy Bridge ~ Broadwell世代のXeon E5シリーズ
 多コアで安いモデルが多く、ゲーミング性能はそこそこでいいのでとにかく性能の高いCPUが欲しい、タスクマネージャーを眺めてニヤニヤしたい人におすすめ。

・Sandy Bridge ~ Haswell世代のXeon E3シリーズ
 安価にXeon環境を手に入れたい人におすすめ。
 (Broadwell世代は希少価値が高くそもそも物がないのであまりおすすめできない)

【おすすめしない】
・Core 2世代以前のXeon
 CPUそのものはかなり安価に手に入りますが、かなり古い世代なので性能は低く、消費電力も多いため常用環境としてはおすすめできません。また、安いCore 2 Xeonの中には対応ソケットがLGA771のものがあり、普及品のLGA775と異なるためソケット又はCPUの改造が必要となり、若干難易度が高いです。

・Xeon E7
Xeon E5やE3と異なりガチのサーバー向けのCPUで、マルチソケット運用が基本です。マザーボードがなかなか手に入らないのと、マルチソケットによる性能への悪影響もあることからおすすめできません。

・Skylake以降のXeon
 今やSkylake世代も旧世代のため、中古品が出回ってはいますが、新しい世代なので価格は高いです。AVX-512を使いたいとか、Xeon公国民になりたいとか強い意志がない限りおすすめできません。

・Xeon Phi
 科学計算に特化したCPUです。コア数・スレッド数はめちゃくちゃ多いですが、シングルスレッドの性能はAtom並みなので、普通の用途では使い勝手が悪すぎます。タスクマネージャーを見てニヤニヤしたり、本来の用途である科学研究用途に使用したりするにはいいと思います。


■注意点(Xeonに限らず中古品全般)
Ali Expressなどの廉価品は偽物も多い
 最近は中国のAli ExpressなどでXeonが投げ売りされている事が多いですが、こういったサイトでは偽物も多いので注意が必要です。また、中国はお国柄的に詐欺が多いため、Ali Expressに限らず中華系のサイトでの買い物や中国メーカーのものを購入する時は注意が必要です。

動作未確認のジャンク=偽物?
 特にヤフオクに多いものですが、動作未確認のジャンクはかなり高確率で偽造品が混ざっています。
(最近は詐欺CPUがAmazon、メルカリ、ebayにもよく出没)
 アホみたいな詐欺商品でも、買うときには気づかない可能性が高いので、注意が必要です。

ES(エンジニアリングサンプル)品という闇
 中古CPUとして、時折製品版ではなくES(エンジニアリングサンプル)と呼ばれるものが出回っている場合があります。
 ESは本来、Intel・AMDからマザーボードメーカーなどの開発者に対し、テストをするために送られるテスト用のCPUで、秘密保持契約(NDA)が締結されていることによって表に出てこないはずですが、時々市場に出回っていることがあります。
 また、テストが進み製品版になる直前のものは「Quality Sample」(QS)と呼ばれる場合もあります。
 ES版のCPUは当然製品版ではないため保障はなく、安定性の面でも劣るため、完全自己責任となるので注意が必要です。(買うのは問題なくても、売った場合には違法行為となり罰金を科される場合があります。また、比較的良心的な詐欺製品として出回っている場合もあります)
 なお、レアなケースだとは思いますが、ES版でも品質が十分な場合にはCPUの情報を書き換えて製品版として売っている(供給量を増やすため)、という話もあるそうです。

(※良心的な詐欺…まだ動くだけマシという意味。酷いのになると、CPUのダイすら入っていなかったり、CPU風の鉄板にロウのCPUクーラー風のものが入っていたり、Celeron Dual-Core(LGA775)にRyzenのステッカーを貼って偽装しているものまである。)

Windows 11への対応
 2021年6月に、マイクロソフトがWindows 10の後継となる「Windows 11」を発表しました。
 Windows 11の動作要件はかなり厳しく、現時点ではIntel Kaby Lake、AMD Ryzen 1000以降が対象となっています(今後、緩和される可能性あり)。
 緩和されたとしても、TPM 2.0というセキュリティ関連の機能の関係でIntelだとHaswell以降が必須となるため、それ以前のシステムではWindows 11自体は動いてもサポート対象外となるのがほぼ確定的です。
 ただし、Windows 10ももうしばらくサポート期間が続くため、Ivy Bridge世代以前なら、サポート期限が来る前に性能的にオワコンになるのではないでしょうか?


■実際のXeonの性能は?
 これだけXeonのことについて書いておいて、性能について一切触れないのもアレなので、代表的なベンチマークであるCinebenchの結果比較グラフを載せておきます。

 注目すべきはIvy Bridgeで12コアも搭載する「Xeon E5-2697v2」ですが、

cbr20m

これはヤヴァい。

2697v2は2013年に登場したIvy BridgeアーキテクチャのCPUですが、同世代の3770Kや4960Xと比較すると圧倒的なスコア、なんと4年後に登場する8700Kや1700と同じくらいのスコアです。

しかし、Core i7-8700Kは6コア、Ryzen 7 1700は8コア。
12コアのCPUが6コアや8コアのCPUと同等でどうする。

ということで、恐怖のシングルスレッドテスト結果がこちら。

cbr20s

圧倒的じゃないか!我が軍は!!

逆の意味で…(苦笑い)

まあ、ゲーミング性能重視で高クロックな3770Kに負けるのは仕方ないにしても、
最新のセレロンより下ってどういうこと???
ってか、最新のセレロンが高性能なだけ?

というわけで、恐怖のシングルスレッド性能でした。
ただ、これでもIntel CPUでリングバス構造なので、特殊構造でレイテンシがヤバいAMD FXに比べればゲーミング性能は結構上だったりします。(ゲームに向いているとは言っていない)

やはり、Xeonは作業用に使うのが良さそうですね。


■終わりに

さて、奥が深いXeonの世界ですが、たまには普通のCPUだけではなく、Xeonも試してみるのもどうでしょうか?
ただし、ハマり過ぎて沼に落ちないよう気をつけましょう。

(なお、管理人は途中のグラフに記載されているCPUの大半を所有しています。このグラフを作るのにどれくらいのコストが掛かったかについては想像におまかせします。)