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近年、新型コロナウィルスやウクライナ問題の影響で輸送コスト・原材料費が上がり、日用品などの値上がりが問題になっています。
しかし、テレビやネットニュースの報道に違和感を覚えます。

なぜ、わざわざ値上げすることを報道するのでしょうか?
値上げすることを報道するのは、一見消費者への注意喚起ということで、合理性があるようにも思えます。
しかし「価格を引き上げる」ということは、消費者にとってあまりいい情報ではありません。
長期的に考えると、テレビなどで値上げすることをその都度報道すると、消費者が防衛的になり、消費が冷え込み、景気に悪影響を与えてしまいます。
特に新型コロナウィルスの影響で世界的に景気が悪化し、今まさに回復しようとしているときに、テレビやネットニュースで「○○が値上げ!」とセンセーショナルに連呼されたら、物を買う気が失せてしまい、景気回復が遠ざかってしまいます。

物の値段が上がるのは日本だけでなく、世界中で起こっていることです。
むしろ海外の方が物価上昇が激しい状況にあります。
というか、日本では価格を上げることについてかなり抵抗があるように感じます。
物の値段を上げることに抵抗がある
→企業利益・労働者の収入が増えない
→消費者の購買力が上がらない
→景気を冷え込ませる
という悪循環が起こっています。

もちろん、ハイパーインフレなど行き過ぎた物価上昇は論外ですが、値上げがすべての状況において悪というわけではありません。
逆に、日本の場合は値上げに抵抗がありすぎて物価下落圧力がかかり、その結果労働者の賃金に値下げ圧力が働き、デフレスパイラル的な現象が起こり、給料が上がりにくいということに繋がっているのです。
(ただし、給料が上がらないのはデフレ的なマインドの他に、国や財務省の政策も原因だが、それ以上に経営者が社員に還元しようとしないのが問題だと思っている)

値上げ、値上がり、物価上昇という言葉はあまり響きが良くないですが、経済活性化のために必要なこともあり、赤字を覚悟してまで価格維持・値下げして景気が悪化したら元も子もありません。


■値上げはこっそり、値下げは堂々と
まず、冒頭でも述べた通り、現状のテレビ・ネットニュースの報じ方には問題があると思います。
物の価格が上がるニュースを見ていい気分になる視聴者はいるでしょうか?
(いても少数ですよね…)
物の価格が上がる情報はあまり良くない情報なので、むしろこっそりと行う方がいいでしょう。
というか、テレビやネットニュースで価格改定を大々的に取り上げるのは規制すべきだと思っています。
(ヘッドラインに載せるのは禁止とか)

大幅な値上げだと気づかれてしまいますが、わずかな値上げなら消費者は気づきません。
もし気づかれたら、何らかの理由をつけて申し訳ございません、といえばいいのです。
値上げ幅と理由が納得いくものであれば消費者は許してくれます。
逆に、暴利をむさぼるような価格改定であれば消費者は離れてくれます。

逆に材料費が安くなったなどの理由で値下げするときは堂々とやります。
20% OFF」とか「50% OFF」とかポスターに大きく書いてあることがありますが、まさにそれですね。

値下げをアピールすることは大事です。
特に、農作物などで豊作にもかかわらず売り上げが低迷しているときに、売りさばかないと農家が赤字・経営難になってしまいます。
赤字を回避するために、農作物を廃棄するということも発生してしまいます。
カロリーベース自給率40%、金額ベース自給率70%弱の国で、これをやるのはもったいないと思いませんか?

こういう時こそ、マスコミには
○○が激安!○○を使った格安レシピを紹介
みたいな番組タイトルで消費を促してほしいものです。

ただし、値下げのし過ぎには注意です。
加えて、社員の給料を削ったりして値下げするのは厳禁です。


■値上げする正当な理由
とはいえ、消費者の立場からすれば物が値上がりするのは望ましいことではありません。
しかし、値上がりする合理的な・正当な理由があるのです。

・製造原価の上昇
そもそも製造原価が上がってしまうのであれば、値上げもやむを得ないでしょう。
むしろ無理矢理コストを圧縮して、赤字になってまで安売りするのは企業にとっても、経済にとっても悪いです。

・人件費の上昇
ここ最近は人件費の上昇を理由に値上げしている例も多く見られます。
人手不足で人手を集めるために給料を引き上げて、応募を増やそうとしています。
例えば運送業、公共工事などが人件費を引き上げています。
どんどん人件費上げちゃってください。
もちろんやりすぎはNGですが、人件費はつまるところ社員の給料や福利厚生なので、人件費が増えるということは社員の収入の上昇、最終的には経済の活性化に繋がります。

・商品のレベルの向上
量が増えたとか、質が良くなったとか、製品やサービスのレベルが上がったことを理由に値上げするのも有りでしょう。
量や質が良くなれば、値上げしても消費者は納得してくれるはずです。
(※ただし詐欺はやめましょう)


■絶対にやってはいけないこと
・駆け込み需要を狙う
価格が上がる前は、安いうちに買おうと消費者が駆け込み需要を狙うことがあります。
これによって一時的には売り上げが伸びますが、逆に言うと価格が上がった瞬間に売れなくなり、長期的にはマイナス面もあります。
消費税の8%、10%改定の際にも駆け込み需要を狙った企業が多かったですが、これは愚策だと思いました。
駆け込み需要の後は消費が冷え込むのが分かっていながら、なぜやってしまったのでしょうか。
それによって本当に経済が悪化して、政府が景気対策のために「やっぱり消費税元に戻すわ」というならまだしも…

・協力して価格つり上げ
価格改定する際に、各社がそれぞれ値上げするのは問題ないです。
では、業界各社が協力して一斉に値上げしたらどうなるでしょうか?

答:違法です。

これは「カルテル」に該当する行為です。
「カルテル」を簡単に言うと「談合」のことで、競争入札で事前に誰に入札するかを決めるようなものです。
カルテルは競争を阻害するため、独占禁止法で規制されています。
(官製談合、といえばなんとなくイメージが湧くでしょう)
カルテルによる値上げも同様で、業界各社が談合して一斉に値上げしてしまうと消費者が困るという理由から、独占禁止法で規制されています。

・量を減らして価格維持(ステルス値上げ)
何とかして価格は維持したいが、コスト上昇で利益が減ってしまう…
という場合にとられるのが「ステルス値上げ」と呼ばれる、量を減らして価格維持する方法です。
お菓子などの値段は変わらないけど、大きさが少し小さくなった、みたいなものです。

一見、この方法は値上げせずにコストを圧縮できるので合理的に見えますが、大きな罠が潜んでいます。
まず、売り上げが拡大する方向に行きません。
ただ売り上げと販売量が縮小するだけで、経済縮小圧力がかかってしまいます。

また、環境にもよろしくありません。
大きさを小さくする方法だと、包装の割合が増え、廃棄物の割合が増えてしまいます。
最近話題のSDGs的にも、量を減らすよりも無駄な包装を減らした方がスマートのように思えます。

さらに、量を小さくするというやり方は人によってはズルい方法だと感じ、企業のイメージダウンにも繋がります。
ステルス値上げはデメリットが多すぎるので、個人的には愚策だと思っています。


■おわりに
物が値上がりするのは、人々の生活にとって確かに厳しいことですが、そうならざるを得ない理由もあるのです。値上げしないと大赤字になったり、倒産したりすることもあるので、やむを得ず値上げするということは多々あります。
特に人件費にかかわる部分は、国民の給料にも関連する部分なので、人件費上昇のために値上がりしてしまうことに関してはむしろ喜ぶべきなのかもしれません。

世界情勢の不安定化、原材料・輸送コスト・人件費の高騰、環境対策、リフレ政策など価格が上昇する材料はたくさんある一方で、価格が下落する材料は少なく、今後も価格上昇というのは避けられないと考えています。
その中で、値上げに怯えたり、物価上昇を煽って買い控えを生じさせたりのは良くないです。
経済を活性化させて給料を増やすとかポジティブな方向にも考えることが、今後重要になるのではないかと思います。

(浪費も見方によっては悪くないと思います。ただし、某給付金使い込み事件のようにネットカジノに使ったりするのは論外。せめて国内に金が流れるように)